
会社の経営を引き継ぐにあたって、財務面のことは切っても切り離せないものです。しかし、新たに経営をするとなったときに最初から完璧に理解しているという方も少ないものでしょう。
そこで、ここでは事業承継において必要な財務知識について、実態の把握をはじめとして、どのようなサポートがあるか、事前に点検すべき点など、詳しく書いていきます。
事業継承をするときには、会社がどのような財務状態にあるのかを把握しておかないと、承継の方法によっては損をしてしまうこともあります。それでは、実際に把握するためにはどの書類を見たら良いのでしょう。
会社は、毎年決算書というものを作成します。決算書は一般に貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つから構成されています。こちらを確認することで、その事業年度の会社の財政状況や業績を把握することができます。
しかし、こちらの書面の表面的な内容のみを見るだけでは十分な把握はできません。 より正確に把握するためには内容を精査していく必要があります。というのも、決算書は課税のために国や地方自治体に提出するので税法基準で作成されがちです。
したがって、これから損失が出ることが分かっているが現時点では加えられていないものがあったり、現在の資産価値と取得時の資産価値が異なっていて書面では現在と違った価額が記載されていたりします。 さらに、精査していく上で書面上は問題なく見えるが、実は債務超過で収益性が低いなどということが分かることもあります。その為、実際に事業継承する前に、財務の実態把握をした方が良いでしょう。
財務の実態把握をした方が良いということが分かったところで、その資料となる決算書について詳しく見てみましょう。精査をするにしても、そのものが分からなくては精査できません。決算書は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つから構成されていると先に書きましたが、この3つについて詳しく見ていきます。
まず、貸借対照表は現在の資産の内容が書かれています。対照表ですので、左右で対照になっています。右側が負債と純資産、左側が資産となっていて、負債や純資産によって調達された資金が運用されることで資産が発生します。よって、右側と左側の収支は合うようになっています。
次に、損益計算書です。こちらは稼ぎからコストを引いて儲けを計算する書面です。損益計算書には、利益の種類によって計算が分かれていて、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益の5つが記載されています。このうちの経常利益が経営活動の成果を示すものなので、会社が黒字であるかを把握する一つの指標になります。
最後に、キャッシュフロー計算書です。会社の1年間の現金の増減について表したもので、会社における家計簿のようなものです。営業に関するもの、投資に関するもの、借入金等の借金に関するものの3つに分けて、現金がどのような理由で増えて、減ったのかを明らかにしています。
ここまで、事業承継をする前に会社の実態把握をするということで、参考となる決算書について書いてきましたが、決算書がどんなものかは分かったけども、自分で実際に精査するのは難しいという方も多いでしょう。そのような時に助けになるのが、財務アドバイザーです。
財務アドバイザーは、会社における財務関連の問題についてアドバイスを行う者のことで、金融機関やコンサルティング会社がその役割を担う場合が多いようです。その他にも、税理士や公認会計士、弁護士、そして司法書士が引き受ける場合もあります。課題の分野によってはそこに特化したアドバイザーに相談した方が良いので、相談する内容に応じてアドバイザーを選ぶと良いでしょう。
例えば、金融機関は近年、事業承継のサポートに力を入れているところが増えてきており、取引のある銀行であれば自社の財務内容に合わせてアドバイスをしてもらえる可能性があります。主に資金面での相談や各専門家への案内が期待できるようです。
また、コンサルティング会社であれば事業承継全般に関することの他にも、各専門家とのコーディーネーターとしての役割も果たしてくれる場合があります。さらに、税理士、公認会計士であれば税金に関することや経営における課題や改善についても合わせてアドバイスをもらえます。そして、弁護士や司法書士は相続や贈与等の法律に関すること、登記事項の変更などとそれぞれ役割が異なってきます。
なお、事業承継における公的な相談窓口として、各都道府県に事業引継ぎ支援センターがあります。公的な機関ですので、基本的な相談は無料です。そこからも課題に応じて各専門家に案内してもらうことができますので、窓口として最初に利用するのは事業引き継ぎ支援センターにするのも有効な手段と言えます。
ひとまず財務の実態把握について方向性が見えてきたところで、点検すべき点があります。それは、個人と会社の経費、費用と資産の2つに関して曖昧にして処理していないかです。
まず、個人と会社の経費について、交際費や旅費等は個人の経費と混同しやすいです。これらは節税のためにという口実で、実際は個人の経費であるのに計上しているなどということもあります。決められた条件に該当していれば計上すること自体は問題ありませんが、事業承継をする際にこの辺りはクリアにしておいた方が良いでしょう。
また、過去に税務調査を受けている場合、指摘内容はどんなものだったか、それに対してどのような対応をしたのかも合わせて確認しておく必要があります。
次に、費用と資産についてです。利益を出すために会社で取りやすい措置として、決算書上の費用を資産として処理することが挙げられます。例えば、修繕費や消耗品費として費用処理すべきものを固定資産として資産計上してしまっていることがあります。こういった処理に関しては、課税所得の増加に繋がるので、税務上は指摘を受けることはありません。
しかし、事業承継する際にはデメリットになる場合がありますので、確認しておきましょう。このようなきっかけがないと改善することが難しい財務に関する問題については、事業承継の際に改善することが望ましいです。