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会社を買って失敗しないために大企業の役割、能力と、中小企業の役割、能力とのズレを知っておく

スモールM&Aで承継型起業を考えている人が、大手企業など出身の場合や、中小企業の実態をあまりわかっていない人の場合だと、会社を買った後の中小企業の実態で悪いズレが起きてしまいますので、ここでは中小企業の実態の中で、大企業と中小企業の違いということを分かりやすくご説明します。

 

 

 

経営者は戦略、戦術、実行までやらないといけない

大企業の場合には経営上の重要戦略など上位部分を経営者が考えて、戦術、実行などは部などが行うという感じで戦略、戦術、実行においてもかなり役割分担がされています。中小企業の場合には、戦略、戦術、実行など経営者がすべて主導しないといけないことがしばしばあります。社員に戦略、戦術を考えてと言っても考えたことがない社員が多くできない人も多くいます。実行部分も分かりやすく落とし込みをしていく必要があります。

 

マネジメントも全部やらないといけない

大企業の場合には、組織図上、管理者がいれば、その管理者がその部などのチームの目標、課題、解決のアクションなどをマネジメントして、部、チームがしっかりとうまくいくように管理をしていると思います。中小企業の場合には、組織図があって、そこに管理者がいたとしても、実際には一作業者で、その部、チームの課題などを解消しているわけではかったりしますので注意が必要です。管理者として機能はしていないので、結局、経営者が管理をしていること、経営者も管理ができていないことがしばしばあります。

 

役割の「専門性」 vs 「マルチタスク性」

大企業

中小企業

役割が細分化:業務は部署や職種ごとに明確に分かれ、専門性が重視されます(経理部は経理業務のみ、総務部は総務業務のみ)。とても合理的に役割が明確になっているわけです。

役割が雑多:人がいないこと、コストの問題、業務整理などができていないことが原因として、1人が複数の業務をこなす「マルチプレイヤー」が求められます(例:総務が経理や営業支援も兼務)。

担当範囲が狭い:自分の担当分野以外には関わらないのが通常です。

担当範囲が広い:事務員が経理、労務、総務、さらには電話対応や庶務まで担当することがよくあります。そのため重要な仕事に集中できていなかったり、PDCAが回らない現状があったりします。

 スペシャリスト志向

 ジェネラリスト志向

 

ポイント
中小企業では「経理担当者」として雇った社員が労務、総務、雑務もこなすことが日常茶飯事です。経営者自身も「社長」だけでなく「営業マン」「人事部長」「総務部長」としての役割を果たす必要があります。1人の人の役割がマルチになることによって、管理がしにくくなったり、役割が多数あるからということを理由に、仕事ができていないことの正当化をしたり、1つのことに専念しているわけではないので仕事の生産性が上がらない、コミットが見えないなどの問題があるので、会社を買った後で少しずつ改善をしていくべき部分です。

 

「ルール重視」 vs 「場当たり的対応」

大企業

中小企業

マニュアル・手順が整備されている:業務は標準化され、業務マニュアルや業務フローが整備されています。

マニュアルがない、または曖昧:業務は「その場の判断」で進められることが多く、個人の経験や勘が重要になります。人によって同じ仕事でも仕事の仕方が変わるのが中小企業です。

手続きが多い:社内承認プロセスが複雑で、稟議や承認が必要な場面が多いです。

即断即決が求められる:現場での判断が最優先され、経営者や現場担当者の裁量で意思決定が行われます。

制度重視

即興重視

ポイント
大企業では「ルール通りにやる」ことが求められますが、中小企業では「今どうするか?」の判断力が重視されます。大企業で「上司に確認しないと動けない」スタンスのままだと、中小企業では動きが遅くなり、業務が滞ります。

仕事の仕方が明確に定義をされていないため、現在働いて業務が最低限できる人はよいのですが、新しい人が入った際に仕事を教えることなどができずにとてもボトルネックになるのが中小企業です。会社を買った後で仕事の仕方などを明確にルール化していくことをしないといけません。業務が特定の人に属人化、ワンマン化となる部分でもあります。

 


「安定志向」 vs 「変化耐性」

大企業

中小企業

変化が少なく安定志向:会社が大きいため、年単位での変化はゆるやか。大きな組織変更は数年に1回程度です。

変化が日常的:取引先の変更、人員の退職、急なトラブル対応などが日常的に発生します。

役職や評価が安定:年功序列的な人事評価が多く、職位が大きく変動することは少ないです。

人事変動が頻繁:人手不足や人員の入れ替わりが多く、誰かが退職すると大きな影響を受けます。

変化が嫌い

変化を受け入れる体力が必要

ポイント
中小企業では、「朝令暮改」「変化は当たり前」という文化が必要です。突然のトラブルや急な変更にも対応する柔軟さが求められます。大企業の「じっくり議論してから動く」という感覚は通用しませんので、大企業出身などでスモールM&Aで会社を買う、承継型起業を考えている人は、そのスピード感の違いに1番ギャップを感じることになると思うので心づもりをしっかりとしておきましょう。

 


「リソースが豊富」 vs 「リソースが限定的」

大企業

中小企業

豊富なリソース:人材・資金・取引先・ノウハウ・システムが豊富。ITツールや外部支援が活用されます。

リソース不足:人材・資金・ノウハウなどとにかく限られており、外部支援も利用しづらい環境です。

分業が可能:社内の各部署が協力して業務を分担できる。

1人何役もこなす必要がある:人数が少ないため、社員1人が複数の業務を兼務します。

リソースの余裕がある

リソースがギリギリ

ポイント
大企業ではシステムが自動化されている部分(経費精算、請求処理など)が中小企業では手作業で行われます。ITシステムが導入されていないケースも多く、表計算ソフト(Excel)での管理が一般的です。経営者が感情的に「システム投資は贅沢」「システムは苦手」と考えている場合があり、ツール導入のハードルも高いことがあります。中小企業の場合にはリソースが限られているので、リソースがないからできないという言い訳が生まれがちです。そのように言っても何も解決しないため、会社を買った人は、建設的に、リソースは確かに限定的であってもできることを示していくことが社員を前向きに転換させていくためにも必要なことになります。

 


「評価基準が明確」 vs 「評価が感覚的」

大企業

中小企業

評価基準が明確:年次評価、360度評価、人事制度が整備されており、目標に基づく評価が行われます。

経営者の主観が大きい:評価は経営者の「あの人は頑張っているから昇給」といった属人的な評価になりがちです。

人事評価は制度に基づく:KPIや目標設定が行われ、成果が可視化されます。

評価の透明性が低い:評価基準が不明瞭で、評価基準が社長の気分次第になることがあります。

評価の透明性が高い

評価が不透明

ポイント
中小企業では評価の仕組みが整っていないため、経営者の主観が評価に大きく影響します。大企業のような人事制度(MBO、OKRなど)は導入されておらず、「社長の気持ち次第」で昇給や役職が変わるケースもあります。昇給や昇格がまだある中小企業は良いのですが、全然ない中小企業もあります。昇給、昇格は働いている人の大きなモチベーションであるため、実際の中小企業においては仰々しい評価体制、仕組みは不要ですが、公平性をもって評価をすること、社員にいつも頑張りをみていて、会社はそれを形で返そうと思っていることを伝えることが大切です。

 


まとめ:大企業と中小企業の5つの違い

項目

大企業

中小企業

役割の違い

専門性が高い

マルチタスクが求められる

意思決定

マニュアル・手続きが多い

その場の判断が優先

変化の耐性

変化が少ない

変化が日常的に発生

リソースの違い

人材・システムが豊富

限られたリソース

評価制度

基準が明確

社長の主観が反映されやすい

 


 アドバイス

中小企業では「1人で何でもやる」ことが求められ、「変化を楽しむ柔軟性」が必要です。もし、大企業のサラリーマンがスモールM&Aで中小企業の社長になった場合、「社長はプレイヤーであり、雑用係でもある」という覚悟が必要です。会社を買った=オーナーで、何もしないでよいだなんて思ったら即失敗します。中小企業は課題が全てのところにあり、山積しています。システムがない、IT化されていない、人手が足りないといった「中小企業あるある」を理解することが重要です。

 

 

 

Tags: 事業承継
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