
買い手としてスモールM&A、承継型起業を成功させるために徹底した売り手企業に関する調査が欠かせません。この調査のことをDDと言います。DDは法律、財務、ビジネスなど様々なテーマがあります。買い手個人がDDをするということ専門家でもないので現実的でなくプロに任せることがおススメです。もちろん費用がかかるためスモールM&A、承継型起業などだと軽んじられている部分ですが、絶対にやらないいけないことです。
売り手経営者がめちゃめちゃ良い人なんで嘘とかないので大丈夫ですと言う人が
たまにいますが、良い人かどうか関係ありません。DDをしないということは、一度も会ったことのない人と結婚するようなものだと思っていただけるとよいと思います。
下記では、法律系のDD、財務系のDD、ビジネス系のDDについて簡単にご説明します。
概要
法務DDは、買収対象会社が法律や契約に関して問題がないかどうかを調査するプロセスです。会社の法的リスク(訴訟リスク、契約トラブル、知的財産権の問題など)を把握するのが目的です。
調査する項目
· 会社の設立・登記:会社の登記情報、定款の確認(株主構成、取締役構成など)
· 契約関係:顧客・取引先との契約書(販売契約、業務委託契約、賃貸借契約など)
· 労働問題:従業員の雇用契約書、未払いの残業代の有無、労働基準法に基づく労働環境
· 知的財産:商標権、特許権、著作権などの確認
· 訴訟リスク:過去の訴訟記録、現在進行中の訴訟の有無、係争中の案件があるかどうか
· 法令違反:各種法令に違反していないか(独占禁止法、労働法、環境法など)
リスクの例
· 取引先との不利な契約:取引先に「片務的な契約条件(買い叩き、解約リスク)」がある場合
· 労務リスク:従業員に未払いの残業代がある場合、退職金負担が過大な場合
· 未解決の訴訟リスク:過去のトラブルが残っていると、買収後に訴訟を抱える可能性があります
· 許認可のリスク:特定の業種(飲食、医療、建設など)は「許認可」が必要です。これが買収時に引き継げないケースがあるので要注意です。
注意点と対策
· 契約書の確認は専門家(弁護士)に依頼する:契約書は一般人が見ても理解が難しいため、専門の弁護士に依頼するのが鉄則です。
· 知的財産権(商標・特許)の確認が重要:製品の商標やブランドが第三者の権利を侵害していないかを調べる必要があります。
· リスクが判明した場合の交渉:リスクが判明した場合、**「価格交渉(値引き)」や「特約の設定(売主が責任を取る特約)」**を行うのが一般的です。
概要
財務DDは、買収対象会社の財務状態や資金繰りの実態を明らかにする調査プロセスです。財務諸表の数字が正しいかどうかを検証し、隠れた負債や不良資産がないかを確認します。
調査する項目
· 財務諸表の確認:貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)を精査します。
· 資産の確認:会社の資産(不動産、機械設備、在庫、売掛金など)の実態確認
· 負債の確認:負債(借入金、買掛金、リース債務、保証債務など)が過大でないかを確認
· キャッシュフローの確認:本業の収益がキャッシュインに繋がっているかどうかの確認
· 簿外債務の確認:財務諸表に計上されていない**隠れた負債(未払金、退職給付引当金など)**があるかどうかをチェック
· 売上の安定性:売上先(顧客)の集中度を確認します。特定の1社に売上が依存しているとリスクが高いです。
リスクの例
· 簿外債務の存在:会計に計上されていない未払い費用、役員退職慰労金の負担が後から発覚するケースがあります。
· 過度な在庫の存在:在庫が過剰で回転が悪い場合、不良在庫のリスクがあります。
· キャッシュフローの不安定さ:見かけの利益は出ているが、現金収入が乏しいケースは危険です。
· 粉飾決算の可能性:売上の水増し(架空取引)や費用の先送りなど、意図的な粉飾のリスクがある場合は注意が必要です。
注意点と対策
· 財務のチェックは専門家(会計士・税理士)に依頼する:財務諸表の不正や粉飾は外部から見えにくいので、公認会計士や税理士のサポートが必須です。
· 簿外債務を見逃さない:買収後に発覚した負債は、すべて買い手の責任になります。特に、未払い税金、未払い退職金には注意が必要です。
· 現場の在庫確認も行う:在庫資産は「売れ残りの不良品」が含まれる可能性があるため、現物確認が必要です。
· 過去の財務データを見る:直近1年分だけではなく、過去3~5年の財務データを分析することで、売上の変動やトレンドを把握できます。
買収対象会社の事業の実態や将来の成長性を調査するプロセスです。調査項目は、市場環境、競合分析、顧客基盤、ビジネスモデルの持続性などです。特に、主要な売上先の依存度、リピート率、契約期間の長さを確認し、安定的な収益が見込めるかを判断します。加えて、経営者のノウハウや属人的な業務が多いと、買収後のリスクが高まります。事業の強みとリスクを定量的・定性的に評価し、買収判断や価格交渉に活用するのがビジネスDDの目的です。
ビジネスDDが極めて大切なのですが、相当な経験、力がないとできないことでもあります。
DDをしない、軽視してのスモールM&A、承継型起業の失敗はたくさんあります。法務、財務DDは弁護士、税理士などに最低限の相談はするべきですし、ビジネスDDもやらないは絶対になしで、ご自身で徹底的に学習をして臨むでもよいのですが、できれば信頼のおける経営のプロなどにも見てもらえるととても安心です。