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スモールM&Aや承継型起業の会社選びで必ず確認するべきポイント

スモールM&Aや承継型起業の「買い手」として、失敗しないために売り手の会社を選ぶ際の具体的なポイントを詳しく解説します。これらのポイントをしっかりチェックすることで、買収後のリスクを抑え、成功する可能性を高められます。

1. 事業の健全性を確認する

チェックポイント

財務状態の健全性
売上高・利益の推移(過去3年分は必須)
営業利益率(業界平均と比較する)
負債の状況(有利子負債が多いと危険)
資産の価値(現金、在庫、固定資産の実在性を確認)
キャッシュフローの確認
営業キャッシュフローがマイナスの会社は注意が必要。売上があっても資金繰りが悪い可能性があります。

未払い金・簿外負債のチェック
税金、退職金、未払金の有無を確認。
「簿外負債」(帳簿に載っていない負債)を確認するために、顧問税理士や弁護士と連携する。
資産の実在性
在庫や設備、資産価値が簿価(帳簿の価格)と一致しているかを確認。
特に在庫の古さ(不良在庫がないか)に注意。


2. 事業の将来性を見極める

チェックポイント

市場環境と業界の成長性
参入する業界が「成長産業」なのか「衰退産業」なのかを確認。
競合他社の動向や技術革新の影響を調べる。
収益の安定性
1社依存型(売上の50%以上が1社から)だと、取引先の離脱リスクが高い。

安定した取引先(リピート客)がいるかどうかを確認する。

事業の差別化ポイント

競合と比較して、差別化要素(独自技術、特許、ブランド力)があるかどうか。

価格競争に巻き込まれやすいビジネスは避けるべき。

業界のトレンド

SDGs(持続可能な開発目標)に関連する分野や、サステナビリティが重視されるビジネスは今後の成長が期待できます。


3. 顧客基盤の確認

チェックポイント

売上の依存度
売上が特定の顧客に偏りすぎていないかを確認。
主要取引先のトップ5が全体の売上の50%を超えている場合はリスクが高い。
取引先の契約形態
口約束(非契約)か、正式な契約があるかを確認。
長期的な契約があれば、買収後も売上が安定しやすい。

リピート率の確認
リピート率(常連顧客の割合)が高い会社は安定的な収益が見込めます。

特にBtoBの企業は、リピート取引が多いほど安定性が高い。


4. 組織・人材の確認

チェックポイント

キーマンの存在
社長、創業者、主要幹部がいなくなった場合でも事業が回るか?
キーマン(技術者、営業トップ)がいなくなると、事業の運営が困難になる可能性があります。
従業員の定着率
離職率が高い会社は、労働環境や人事制度に問題がある可能性があります。
3年以上の勤続者が多いかどうかを確認。
組織文化の確認
経営方針や企業風土が、買い手の経営スタイルに合うかどうか。
会社のカルチャーが異なると、従業員の不満が生じやすくなります。
人材のスキル
技術者や営業担当のスキルがどの程度あるかを確認。
特殊なスキル(資格やライセンス)を持つ人材が離職しないような引き継ぎ体制を確認。


5. 事業の運営体制の確認

チェックポイント

ビジネスモデルの自動化
自動化(システム化、IT化)が進んでいるか。
社長やキーマンに依存していないか?
販売チャネルの多様性
店舗、オンライン、直接販売など、複数の販売チャネルがある方がリスク分散できます。
仕入れ先の依存度
仕入れが特定の1社に依存していると、その会社が問題を抱えたときに供給が止まります。
内部統制の整備
会計や財務がしっかり管理されているか。
簿記や財務のルールが不明確だと、粉飾決算のリスクがあります。


6. 法務・契約の確認

チェックポイント

取引契約の精査
売上の基盤となる契約が曖昧(口約束)な場合は、買収後のトラブルに発展します。
過去の訴訟やトラブル
過去に顧客や従業員と裁判をしていないか確認。
訴訟や労働問題の有無は、法務デューデリジェンスで確認する必要があります。
知的財産権の確認
特許、商標、著作権の所有権があるか確認。
特許が切れている場合、競争力が低下します。
労務リスクの確認
未払残業代の問題、労働基準法違反がないかを確認。


7. 価格と条件の適正性

チェックポイント

買収価格の妥当性
売上や利益の「何倍の価格」で提示されているか確認。
一般的な「EBITDA倍率(利益の6〜8倍)」が基準ですが、小規模企業の場合は2〜3倍が多いです。
買収条件の明確化
契約内容(表明保証、価格調整、アーンアウト条件)を事前に明確にしておきましょう。
「アーンアウト」とは、買収後の業績が目標を達成した場合に追加報酬を支払う仕組みです。
支払い方法の柔軟性
一括払いではなく、分割払いにできるとリスクが軽減されます。

Tags: 事業承継
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