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企業の未来を守る—事業承継の現状と今後の課題

自分の会社の運営を続けていくためにはいずれ何らかの形で次代へ自分の会社を引き継いでもらうことが必要となりますし、確実に次の代へと会社を引き継いでいくことは日本経済が衰退せずに発展を遂げていくためには必要不可欠です。事業を次の代へ引き継がせることを事業承継と呼んでいます。
現在企業側は事業承継についてどのようなイメージを持っているのでしょうか。


全国的に行われた事業承継に対しての意識調査


中小企業庁は2017年に今後5年間程度を事業承継支援の集中期間とする「事業承継5ヶ年計画」を策定しました。先ほども書いた通り日本経済がこれからも継続して発展していくためには会社を次の世代へと確実に伝えていかなければいけないのですが、現在日本の多くの起業で経営者の高齢化が進んでいて、事業承継について考える必要に迫られている経営者は一気に増加していくことが予測されています。
調査リサーチ会社の帝国データバンクはこの背景を踏まえて「事業承継に関する企業の意識調査」を2017年10月に実施しました。調査対象となった会社はおよそ21,000社で、そのうち4割程度に当たる10,000社から回答を得ています。


意識調査の結果について解説


まず、対象となっている企業に事業承継についてどのように考えているか質問したところ、「経営上の問題のひとつとしている」と答えた企業が半数以上となっています。更に自分の会社が抱える問題の中でも最優先に解決しなければならない問題として認識していると答えた経営者が1割以上にのぼり、両者を合わせるとなんと7割の企業が事業承継を現在会社が抱えている問題の1つとして認識していることが分かりました。
次に事業承継の計画の有無について質問したところ、事業承継の計画を立て、既に実行している企業が2割程度、計画は立てているが実行には至っていないと答えた企業もおよそ2割程度となっています。調査の結果進捗状況は抜きにして事業承継に関しての計画そのものはあると答えた企業が約4割程度という比率になりました。
そして年齢別にみていくと、社長の年齢が上昇していけばいくほど事業承継の計画を立てている企業の割合が増加している一方で、経営者の年齢が80歳を超えると事業承継の計画を立てている企業の比率は減少していることも判明しています。
先ほどの質問に対し、すでに事業承継を終えていると答えた企業は全体の14パーセント程度となっています。すでに事業承継を終えたと答えた企業に対して、事業承継によって自分の会社にどのような影響があったか質問したところ、事業承継をした翌年にプラスの影響があったと答えた企業は全体の26パーセントでしたが、これが5年後になるとおよそ3割の企業が事業承継によってプラスの効果があったと回答しています。
逆に事業承継によってマイナスの効果があったと答えた企業は全体のうち4.9パーセントと極めて少なく、事業承継をしても特に影響がなかったという企業は事業承継をした翌年に回答した企業がおよそ55パーセントだったのに対し、事業承継をして5年後にはおよそ36パーセントと大きく減少しています。
最後に「事業承継をスムーズにおこなうために必要なことは?」という質問をした結果、現代表と後継者候補との意識を共有させることと答えた企業が全体の6割と最も多く、次いで多かったのが早期に事業承継の計画をして準備することと答えた企業で、およそ46パーセントとなっています。


意識調査から読み取れることは何か


これらの意識調査から事業承継については多くの企業が経営をしていく上で大きな問題の1つであるという認識になっています。ところが問題点として認識している企業が7割以上になっているのにも関わらず、実際には事業承継を終えていたり、事業承継を進めている企業は全体の3割程度でしかありません。
これらの調査結果から早く後継者に事業を引き継ぎたいのになかなか後継者となるような人や会社が見つかっていないといった状況になっていることが浮き彫りとなっています。
実際特に中小企業では会社の業績自体は好調でありながら後継者が見つからないために自分の代で会社を廃業する企業が数多くあります。
調査結果に経営者の中で年齢が上がれば上がるほど事業承継の計画を立てている企業が増加している一方で経営者の年齢が80歳以上になると事業承継の計画を立てている企業の割合が減少するという結果になっていましたが、これは80歳以上になると後継者を探すことをあきらめ、自分の代で会社を廃業しようという考えにシフトする経営者が増加しているからではないでしょうか。
事業承継を行うことは現在とても困難になっていることが現状で、事業承継の問題解決は企業だけに任せてよい問題ではなくなっていることが読み取れます。少子高齢化によって事業承継はこれからますます難しくなっていく可能性の方が高いので国も積極的に支援指定はなければいけない状況になっていると言えるでしょう。
これから事業承継がスムーズに行われなければ廃業する会社は更に増加していくこととなります。廃業する会社が増加すれば日本の経済は発展しないどころかどんどん縮小していくことになるでしょう。


これからの事業承継の在り方


事業承継が困難になっているのは少子高齢化によって後継者となる子供の数が少なくなっている事が要因の1つとなっていることは間違いありませんが、それに加えて社会の情勢が大きく変化したことも要因の1つとして考えられるでしょう。
IT技術の進歩によって現在では現経営者が会社を始めた当初には影も形もなかったようなビジネスモデルが数多く登場しています。そしてそれら最先端のビジネスモデルは若者の興味を引き付ける魅力を持っていることは間違いありません。ですから経営者に子供がいたとしても子供がそういった最先端のビジネスに興味を持てば自分の親の会社を引き継ごうという気にはならないでしょう。
このように事業承継を取り巻く環境は一昔前と比べると大きく変化しています。事業承継をするつもりならば自分の子供を含めた親族だけに候補者を絞るのではなく、自分の会社で働いている人や全く面識のない第三者など、幅広く候補者を募ることも考える必要があるのではないでしょうか。
しかし第三者に事業承継を行えばまた別の問題が発生します。そういった問題をじっくり解決していくためには事業承継について早くから考え、計画を立てていくこともスムーズに事業承継をするためには必要不可欠です。
 

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