img
その会社で働きたいと思うかどうかは会社を買うかどうかの重要な判断軸


その会社を買うかどうかの判断軸として、客観的に見て「『この会社で働いてみたい』と思えるかどうか」は大切です。
 
例えば、買いたい会社が飲食店だとしたら、実際にその店をお客さんとして利用してみて、「明るく清潔感もあって、素敵なお店だな」「店員さんも全員てきぱきしていて、感じがいいな」「この店なら、オーナーとして一緒に働いてみたいな!」と思えるかどうかを確認するのです。

「素人感覚」が大事なポイントです。「その会社(店)で働いてみたいと思える雰囲気かどうか」が重要な判断材料になるのです。「雰囲気」とはやや曖昧な表現ですが、もう少し具体的にいえば、「そこで働く人たちの表情や態度(言動)」です。

働く人たちの表情や態度から醸し出される「会社(店)全体の雰囲気」、そこからわかるのは、その会社の「組織力」や「組織風土」です。

組織力とは、「いかに働きやすい組織(職場)が作られているか」です。組織力が高い会社は、「良い人材を幅広く採用し、長期間にわたり定着して働いてもらっている会社」=「採用力と定着力のある会社」です。こうした会社では、適切な「報酬・環境」「人事評価制度」「教育制度」が整備されており、従業員にとって「やりがい(モチベーション)」を感じられる組織となっています。

その会社独自の「組織風土」も雰囲気に表れます。組織風土とは、その会社独自の(皆で共有している)考え方や価値観です。例えば、製品やサービスを提供するうえで、何を一番重要視するのか。お客さまに対してどういう点にこだわって接するのか、といったことです。

特に中小企業では、社長が持っている価値観が会社全体に影響・反映されるので、それに合う人は会社に残り、合わない人は辞めていきます。したがって、会社には同じような考え方、雰囲気の人が集まって(残って)いるのです。

買いたいと思っている会社がお店なら、「実際にお客さんとしてそのお店を利用してみる」、一般企業であれば「会社訪問・見学する」「一緒に働いてみる」などして、その会社の雰囲気を観察してみましょう。

会社を購入したら、実際にその人たちと一緒に働くわけですから、その意味でも、彼らのリアルな姿を見ておくことや知っておくことは重要です。

 
また、対顧客や従業員同士のコミュニケ―ションの様子も大事なチェックポイントです。

皆さんが普段コンビニや飲食店を利用するときも、「ここの店員は雑談も多いし、接客態度もいま一つ。スタッフの教育がなっていないな」と感じる店もあれば、「ここの店員は皆、動きがスピーディで気も利くし、レベルの高い店だな」と思う店もあるのではないでしょうか。

そのように顧客目線で、挨拶の仕方、アイコンタクトの取り方、従業員同士の会話・雑談の内容などをチェックしてみましょう。その様子が、お客さんとして「気持ち良い」と感じるかどうかが重要です。挨拶やコミュニケーションが粗雑な人が多い職場は、組織力が低い(または、組織風土に問題がある)可能性が高いといえます。

会社の組織風土や、そこで働く人たちのモチベーションは、事前にしっかりと確認しておくことが大事です。もちろん資金や工夫さえあれば、会社購入後に商品やサービスを改善していくことはできます。しかし、長年にわたり培われてきた従業員の価値観や、社員のモチベーションを短期間で変えることは、後からやって来た経営者には至難の業です。もしあなたの考え方と、彼らの考え方との間に埋められない溝、大きな乖離が存在したまま会社を購入してしまったら、取り返しのつかないことになります。

ただし、会社の風土や社員のモチベーションは、一度その会社や店を見ただけではわからない場合もあります。1回の確認、一部の社員の印象だけで決めつけずに、何度か足を運び、他の社員の様子や他の要素もチェックして、慎重かつ冷静に判断しましょう。

Tags: 事業承継
Share: