img
事業承継の節税対策

親族の後継者へのスムーズな事業承継のために、対策を練っておくことはとても重要です。というのは、有効な対策を講じないで株式を譲渡すると、多額の税金を支払わなければならなくなるからです。自社の株価を引き下げることができれば、事業承継時の節税に有利に働きます。
そこでこの記事では、自社の株価引き下げに有効な方法を4つ紹介します。


自社の株価が高いと事業承継の壁になる可能性あり


同族経営の場合、事業承継はとても重要な問題として取り組まなければならない課題の1つです。事業承継後も安定した同族経営を行うためには、現経営者の持つ自社株をできるだけ多く後継者に譲り渡さなければなりません。可能であれば100%、それが無理だとしても少なくとも発行済み株式数の3分の2以上を譲渡するのが賢明です。
自社株をそのまま後継者に譲渡することができればよいのですが、そこには贈与税というものが掛かってきます。自社株の株価が高いのは、経営者としては歓迎すべきことですが、こと事業継承においては話が違ってきます。株価が高ければ高いほど、贈与税が膨大になってくるのです。相続税は贈与税よりは多少税率が下がりますが、それでも多額の税金を支払う必要があります。
事業承継を行った結果生じた税金の支払いのために資産を減らすことになっては、その後の会社経営にも悪影響を与えてしまいます。そのため、自社の株価を下げることはとても大きな意味を持つ節税対策と言えるのです。上場していない同族経営企業の株式の評価は、「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」の併用方式で算出をされるのが一般的です。
算出にあたって特に大きな意味を持つのが、会社の利益金額と総資産額です。つまり、会社の利益と総資産額を減らせれば、自社の株価を引き下げられるということになります。では、株価を下げる方法にはどのようなものがあるのでしょうか。


株価を下げる方法1「不動産を新たに購入する」


株価を引き下げるには、総資産額を減らすのが有効となりますが、具体的な方法として挙げられるのが「不動産を新たに購入する」という方法です。
現金を所有している場合と、その現金で不動産を購入した場合では、一見同じ総資産額のように考えられるかもしれませんが、実は資産の評価が違ってくるのです。不動産の価値は、買った時の時価よりも低い評価になることが多いので、現金として保有している場合よりも総資産額を減らすことができるというわけです。
一般的に土地の評価額は時価の7割ほどで、建物の評価額は時価の6割ほどだと言われています。このように現金を不動産に変えると総資産額が減るので、自社の株価引き下げに効果を発揮するということができます。また、新たに購入した土地や建物を有効利用して会社の経営に活かせれば、事業承継時の節税効果と合わせて一石二鳥となることも十分に考えられるのです。


株価を下げる方法2「引退する経営者に退職金を支払う」


会社の利益を減らす効果的なやり方の1つに、「引退する経営者に退職金を支払う」という方法があります。
退職金は引退する経営者に対する正当な報酬なので、誰にも気兼ねせずに受け取ることができます。同族経営の経営者の場合、企業の利益が減るので退職金を手にすることをためらうケースもあるものです。
しかし、会社の利益が減ると自社株の評価を下げる効果が生じるので、事業承継を行う際にはとても有利に働きます。 会社への貢献度に応じた多額の退職金を手にすれば、引退後の生活も安定するでしょうし、何より事業承継時に後継者が負担する税金を抑えることができます。
退職金の算出方式にはいろいろありますが、退職時の基本給全額に勤続年数や功績倍率を掛け合わせるという方式が一般的です。堂々と正当な金額の退職金を手にして、事業承継時の節税に役立てるのが肝心なことなのです。


株価を下げる方法3「減価償却を計上し資産を減らす」


株価を下げるためにとても有効で、さらに節税効果も期待できる方法が「減価償却を計上し利益を減らす」というやり方です。
減価償却とは、長期間使用していると経年劣化をおこす資産を取得した場合に、取得費用を耐用年数の期間にわたって分割して計上する方法です。減価償却はとても有効な節税方法なので、多くの起業で活用されています。なぜなら減価償却を計上すると利益が減るので、納税額を抑えることができるからです。
また、利益が減るということは、自社の株価を引き下げる効果も見込まれるということになります。 事業承継を行う前に新たな設備投資を行うならば、年数に応じて資産が減少していくので株価もまた下がります。パソコンなどの備品は4年で償却しますし、建物の場合は建築構造によって違いがありますが、事務所や工場用の建物なら22年から50年で償却します。
事業承継を行う前にパソコンやシステムを一新すれば、効率のよい職場環境を作れると同時に株価の引き下げという、2つの面でのメリットが見込まれるということになります。


株価を下げる方法4「生命保険を上手に活用する」


「生命保険を上手に活用する」という方法には、3つの効果が期待できます。まず、生命保険の掛け金を支払う必要があるので、会社の利益を圧縮することが可能です。会社の利益が減れば株価も下がるので、事業承継をする際に役立ちます。
また、積立型の生命保険を選んで契約しておけば、引退する社長の退職金の支払に流用することができます。退職金を支払うことも株価の引き下げには効果があるので、2重の点で事業承継時の贈与税を抑える働きがあるということになります。
さらに、事業承継の前に経営者が死亡した場合には、遺族に保険金が支払われます。複数の生命保険に加入しておけば、さらに安心して事業に邁進することができます。こ
のように、3つの点でメリットがあるのが生命保険への加入なのです。とはいえ、この方法は事業承継の直前に行っても意味のない方法なので、経営者が若いうちから計画的にことを進めておく必要があります。


上手に株価を引き下げるのが事業承継をスムーズに行うコツ


同族経営を行っている企業にとって、スムーズな事業承継は肝に銘じておきたい大事なテーマとなります。堅実で順調な企業経営は、会社の価値を高めると同時に株価も引き上げます。本来ならば歓迎されるべき株価の引き上げは、こと事業承継においては反対の意味合いを持ってきてしまいます。
後継者が自社株を譲り受けた時に税金で困らないよう、また、十分な割合の自社株の保有ができるよう、自社株を引き下げておく必要があります。
今回取り上げた、4つの株価引き下げ方法を上手に活用し、節税に役立てることが事業承継をスムーズに行うコツとなっているのです。
 

Share: