
社内で経営者と二人三脚でやってきた幹部、古参社員などを後継者にするか、親族を後継者にするかという迷いのケースもしばしばあります。
このケースでよくあるのが、親族がまだ若く決め手に欠くということと、社内の候補者が優秀だったり、経営者がとても信頼をしているという場合です。
経営者と二人三脚で数十年やってきた実質NO2だったり、生え抜きの部下だったりすれば経営者としても信頼十分で、業務能力、引き継ぎなどを考えてもとてもスムーズなイメージがあります。しかしこの場合に気をつけないといけないことが、社内候補者の年齢が経営者に近い場合です。経営者に年齢が近いとなってしまうと、またすぐに事業承継の問題が出てしまうわけです。年齢が近いことで、実質の任期も限定されて、長期目線に立って、思い切った経営ができない可能性もあります。
社内後継者の目線においても、実質の任期が短く、株式譲渡をしてもらうとなると、場合によっては多額の株式買い取り資金が必要になるかもしれず、そこまでのリスクを背負ってやりたいとはならないこともしばしばあるのです。
上記の場合には、株式移転はせず、株式は経営者が持って、経営だけを社内後継者にやってもらうというケースもあるのですが、株式を持っている経営者としては事業承継の根本課題が解決されたわけではなく、気持ちがどこか晴れない状態が続くことになってしまうこともあります。
このような時に、株式を保有する経営者が亡くなるようなことがあると、株式は親族に相続されるわけです。経営に対する意欲や興味の有無に関係なく、親族が会社に対する責任を持つことになるわけです。
親族がまだまだ若いため、中継ぎとして経営者をやってほしいと社内後継者にお願いすることがしばしばあります。この際のポイントは、経営者と社内後継者の信頼がしっかりとあれば社内後継者は中継ぎをしてくれるでしょう。しかし、経営者が期待をしてはいけないのが、社内後継者が後継者を決めて、後継者の育成などをしてくれるということです。結局は経営者自身がしっかりと後継者を決めて、育てていくしかないのです。
生え抜きの幹部などに対してこれまでの恩を返す意味で経営者を譲るというような謝恩人事で、社内後継者が年を取っている場合には、社内後継者には本当に経営者をやりたいのかどうかを問うべきです。NO2人材が必ずしもトップに適しているわけではないですし、何となく曖昧な気持ちで任せてしまうとお互い期待値がズレてしまって、後々、事故になってしまうこともあります。いたずらに本当の後継者への引き継ぎ、その機会を失うことにもなってしまいます。