
ここではスモールM&A、承継型起業を考えている人がどのようなステップを経ていけばよいのか、時系列的に9ステップに分けてご説明をします。
· なぜスモールM&A、承継型起業をしたいのか?目的を明確にする(独立したい、資産を増やしたい、社会貢献したい、など)
· 自分が得意な業界・分野を明確化する(業界経験があるか、参入可能かを考慮)
· 投資できる資金の上限とリスク許容度を明確化する
· 「なぜ社長になりたいのか?」を明確にしないと、途中で挫折する可能性が高い
· 自己資金だけでなく融資(銀行借入)を使う前提で考えるのが一般的
· 自分の得意分野と苦手分野を見極め、苦手分野は外部の支援(顧問、専門家)を検討する
単に、一度社長になってみたい、お金持ちになりたいという動機でも十分です。かっこいい、崇高な想いがなくとも多くの経営者は成功をしています。起業したて(=スモールM&A、承継型起業)のタイミングで、崇高な想いなどは必要ありません。どんな理由でも構いませんの強い動機があることがよいです。また実際に会社経営をしている経営者であってもできること、できないこと、得意、不得意は明確にあります。そのため、できないことが多くても全く問題ありません。特に細かいスキル、知識がないということで気持ちを落とす必要は全くないです。
· M&A仲介会社やM&Aプラットフォームに登録する(バトンズ、事業承継引き継ぎセンター、ビズリーチ・サクシード、TRANBIなど)
· 買いたい会社の条件を明確化する(業種、地域、売上規模、利益率など)
· 売却希望の案件を検索し、気になる企業の情報を収集する
· 「業界選び」と「会社規模」の条件を決めることが最重要
· 参入障壁が低い業界は競争が激化しやすいので、競合が少ないニッチな業界が狙い目
· いわゆる良い会社=金額が高くなる構図のため、いわゆる良くない会社であっても改善可能であれば安い価格で買うことができるので、単に業種、地域、売上、利益だけの目線でなく、可能性のある会社を安く手に入れるためにはという目線も持つ
· 仲介会社と関係を築くと「非公開案件」を紹介される可能性が高まる
· 売り手オーナーと初回の面談を行い、経営者の想い、譲渡理由を確認する
· 会社の概要やビジネスモデルを徹底的にヒアリングする
· M&Aの条件(価格、引き継ぎ期間、役員の処遇など)のざっくりしたイメージを確認する
· オーナーの「想い」を理解することが大切(売却理由が不明な場合は要注意です。何か隠していること、それは買い手にマイナスになることがしばしばあります。)
· 「人間関係の相性」も重要。経営者と信頼関係が築けるかどうかが成功のカギです。会社を買ったらそこで終わりといえば終わりですが、会社の内容によっては前経営者の力をうまく借りることで引き継ぎはもちろん、営業活動、社員の定着、地域社会への適用など様々な意味でプラスに働くことが多くあります
· 価格だけでなく、引き継ぎ期間や支援体制も話し合うことが必要
· M&Aの条件(譲渡価格、スケジュール、独占交渉権)を記載し*基本合意書(LOI)を締結する
· ここで価格の大枠が決まるが、まだ法的拘束力はない
· 価格の交渉力が試されるポイント。できれば第三者の専門家を交渉に参加させることができると交渉という意味でとても良い。買い手本人と売り手本人で、買った後も協力してもらおうと思うと妥協のない価格交渉などはとてもしにくいわけです。
· この段階では独占交渉権を得ることが重要。他の買い手が入らないようにする
· 基本合意書の後も、価格交渉の余地があることを忘れない
· 財務DD(売上、利益、資産、負債の確認)
· 法務DD(契約書、訴訟リスク、許認可の確認)
· ビジネスDD(顧客の依存度、事業の将来性、競合環境の確認)
· 税務DD(過去の税務申告や税務リスクの確認)
· デューデリジェンスはプロ(弁護士、税理士、公認会計士)に依頼することが必須
· 隠れたリスク(簿外債務、未払い賃金)が見つかった場合は価格交渉が可能
· すべてのリスクを解消するのは不可能。重要なリスクだけに絞って交渉する
別で、それぞれのDDについてはご説明します。スモールM&A、承継型起業ではDDをとても軽んじていたり、やらないということもありますが、それはあり得ません。DDの精度=スモールM&あ、承継型起業の成功の精度そのものです。
· デューデリジェンスの結果をもとに、買収価格や取引条件を見直す
· 価格交渉のほか、引き継ぎ期間、役員の退職金や処遇なども調整する
· 価格交渉は最後のチャンス。DDで見つかったリスクを根拠に価格交渉を行う
· 買収後にオーナーが協力する内容や期間(引き継ぎ期間)を決めるのが重要
· 不利な条件が残るなら、取引を中止する勇気も必要です。話が進んできてしまったのでもう引き返せない、断りにくいということが起きえます。しかし、不利な点を建設的に解消できていないのであれば、そちらを残してM&Aを進めることがリスクと言えます。ビジネスですので、何か申し訳ないなどの感情に押され過ぎないようにしましょう。
· 最終契約書(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書)の内容を確認し、署名・押印
· 必要に応じて売却代金の分割支払い条件を交渉する
· 法的拘束力が生じる最終契約書は、必ず弁護士の確認を受ける
· 「支払期日」や「分割支払い」などの条件も交渉の対象になる
· 表明保証条項(虚偽情報があった場合の売主の責任)をしっかり確認する
· 銀行融資の実行(融資の実行日は契約締結日と一致することが多い)
· 日本政策金融公庫や地方銀行からの融資を受ける
· 自己資金を含めて資金を確保する
· 事前に融資審査の可否を確認しておくことが大切(融資が否決されるとM&Aが止まる)
· 日本政策金融公庫の融資は使いやすい。特に事業承継支援の融資が活用される
· オーナーからの引き継ぎ作業(顧客の引き継ぎ、取引先の顔つなぎ)
· 従業員への方針説明、会社のビジョンの共有
· 業務の標準化と改善施策の実施
· PMIが最も重要。買収後3〜6か月で事業の安定化を図る必要がある
· 従業員のモチベーション管理が重要。新社長への不安を取り除く必要があります
買収後のPMI=経営統合をしていき、買った人としては会社、事業を落ち着かせて、成長軌道に乗せていくことをしていきます。PMIにあたって大切なポイントなどは別でまとめてご説明します。
· スモールM&Aは自己分析 → ターゲット選定 → 交渉 → DD → 最終契約の流れで進みます
· 特に、DD(デューデリジェンス)とPMI(経営統合)が最重要ポイント
· 弁護士、税理士、会計士の専門家のサポートが必須。特にDDと最終契約書のチェックはプロに依頼してください
このプロセスを1つ1つ丁寧にこなすことで、買収後の後悔を防ぐことができます。