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事業承継で種類株式を活用する方法

事業承継を検討している時は、種類株式の「議決権制限株式」「拒否権付種類株式」などを活用できます。これは、議決権の分散を防げる方法です。後継者が株式における議決権を多く保有していれば、スムーズに事業承継しやすくなります。
これから、事業承継に活用できる種類株式について説明しますので、参考にしてみてください。


普通株式と種類株式とは?


会社が発行する「普通株式」は内容や権利が同じで、一般的には普通株式を発行する決まりです。しかし、平成18年から施行された会社法によって、内容や権利が異なる「種類株式」を発行できるようになりました。種類株式は9種類あり、例外として利用するものです。
種類株式は、9種それぞれを組み合わせて発行できますが、組み合わせができない株式もあります。例えば、取締役や監査役の選任・解任権付株式は、委員会設置会社や上場企業は利用できません。
種類株式は、「特別な権利がある株式」「権利が制限された株式」で、普通株式とは異なります。よって、定款にあらかじめ規定を記載しなければなりません。権利の内容や発行可能な種類株式の総数を決め、定款に記載しておきましょう。
また、すでに経営している会社が新たに種類株式を発行する場合、株主総会で3分の2以上の賛成を得ることが必要です。


事業承継をする時は、議決権3分の2以上の賛成を得なくてはいけない!


会社の重要なことを決める時、株主総会が開かれます。株主総会の特別決議によって、議決権の3分の2以上を獲得することが必要です。事業承継をする時も、株主総会を開催し、株主に賛成してもらわないといけません。事業承継には、親族内だけでなく親族外承継で他人に引き継ぐこともあるため、同意を得ることが重要でしょう。
中でも、M&Aをする時は、さらに反対意見が出る場合もあり、株主総会での説明が大切です。後継者に対する反対意見が多いと、事業承継が進みません。 スムーズに事業承継をするためには、後継者になる人が多くの議決権を保有する方法があります。
株主総会で決議を取る時、株主の人数で賛成数を集めるわけではありません。議決権の数で数えるため、後継者自身が議決権を多く持っていればいいのです。つまり、普通株式の場合、後継者が議決権の3分の2以上を保有していれば、円滑に事業承継できるでしょう。
しかし、現経営者が持つ株式が多いと、相続した時に株式を持ち過ぎるリスクがあります。また、相続人が複数いる場合は、株式を分けてしまうと議決権も分散されてしまうため、スムーズに事業承継できない可能性があるのです。


議決権制限株式を活用した事業承継とは?


「議決権制限株式」とは、株主総会で決議を採る時、議決権を行使できる項目に制限を加えた種類株式です。公開会社において議決権制限株式の発行数は、発行済み株数総数の2分の1以下としています。これは会社法第115条で決まっているため、発行可能総数は守らないといけません。
また、「株主総会の議決権を行使できる事項」「議決権の行使に条件がある時は、その条件」を定款で定めることが必要です。例えば、「A種類株式を保有する株主は、株主総会の決議全てで議決権を有さない」「B種類株式を保有する株主は、取締役選任について議決権を行使できない」など、条件ごとに定款記載していきます。
議決権制限株式を利用した事業承継をする場合、後継者と他の相続人に分ける株式の種類を変えます。後継者は議決権がある普通株式、他の相続人には議決権制限株式を相続するようにしておくのです。この方法を活用すると、後継者はスムーズに事業承継でき、経営権を持てます。
また、議決権制限株式には、議決権を行使できない「無議決権株式」、一部の決議事項のみ議決権を行使できる「議決権一部制限株式」がありますが、事業承継では、無議決権株式にしておくことが大切です。 しかし、他の相続人に議決権がないと、不満が出ることもあるでしょう。
議決権を持たないかわりに、「残余財産優先分配株式」や「配当優先株式」を加えることで、金銭的な利益を渡すことが重要です。経営権や議決権がなくても、金銭面で優遇されれば、相続人同士の争いを減らせる可能性があります。
なお、残余財産優先分配株式とは、清算やみなし清算の時に、普通株主よりも多くの分配がある権利株式です。廃業など会社をたたむ時に優先されますが、それ以外は普通株式と同じように使えます。
一方、配当優先株式は、利益の配当時に優先される株式です。配当を優先する代わりに、議決権を制限しています。


拒否権付種類株式を活用した事業承継とは?


「拒否権付種類株式」は、一度株主総会や取締役会で決まったことがあっても、成立を拒否できる権利を保有するものです。元経営者が拒否権付種類株式を保有していれば、事業承継後の後継者が未熟な場合に利用できます。つまり、後継者や株主総会が決めたことでも、元経営者が成立を止められるのです。
これは、事業承継時に後継者の教育不足だった時に、活用できるでしょう。引退はしていても、特別な決定事項に関しては意見を伝えられます。
事業承継では、親が所有する株式を子供に譲渡する代わり、1株だけ拒否権付種類株式を持つというケースが多いです。1株だけでも持っていれば、親が後見的な立場で支えられます。 また、拒否権付種類株式を発行する時も、定款へ規定を記載しますが、具体的な当該事項も詳細に書くことが必要です。
当該事項の一例として、「取締役や監査役の選任と解任」「重要財産の全部または一部の処分」「吸収や合併時の組織再編行為」などがあります。さらに、「募集株式の発行」「新株予約権の発行」など、株式についても詳細に記載しなければなりません。
例えば、取締役や監査役の選任に関しては、「株主総会決議のほか、拒否権付種類株式を保有する株主の決議を要する」と記載します。この記載があれば、最終的な決議をする権利を保有できるのです。 拒否権付種類株式は黄金株とも呼ばれ、大きな影響力を持ちます。
事業承継に活用するため元経営者が保有しますが、相続の対象になるので注意が必要です。万が一、拒否権付種類株式が意図しない相続人に渡った場合、事業承継対策の意味がなくなってしまいます。もし相続した人が権利を濫用すると、トラブルが起きることもあるのです。よって、拒否権付種類株式を発行する時は、必要性や内容・発行数をしっかり検討するといいでしょう。
 

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