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相続税・贈与税の負担を抑える具体策

事業を引き継ぐ時には相続税の問題が重要となります。事業承継の際には後継者に非上場会社の株式を譲り渡すことがほとんどですが、株式には財産としての価値があります。株式の相続税評価が高くなりすぎることにより、納税資金が不足するということも起こる可能性があります。それゆえに相続税対策を行うことが大切です。
事業承継の相続対策について解説します。


事業承継税制の特例を利用する


事業承継税制には特例があります。この特例は2018年の税制改正により、一層使いやすくなりました。この特例が適用されれば、後継者が非上場株式を先代の経営者から取得して経営を引き継ぐ際に、承継する非上場株式の相続税や贈与税の納税が100%猶予されます。猶予されている間はそれらの税負担が0になるため、節税の効果としては非常に大きいといえるでしょう。
ただ、特例が適用されるためには自社株式承継後に譲渡などをしないこと、後継者が承継後も代表権を有し続けること、資産管理会社に該当しないことという3つの要件を満たす必要があります。これらの要件を満たさない状態になると、猶予されていた税金と利子税を一括納付しなければなりません。ただし、従業員が5人以上いる場合は資産管理会社に該当しても問題はありません。


利益を圧縮する


非上場株式にかかる相続税や贈与税は株式評価額に大きな影響を受けます。高い利益を生み出している企業の非上場株式は評価額も上がっていきます。逆に言えば利益が少ない企業であれば株式評価額が下がり、後継者への税負担も少なくなるということです。長期的に利益が下がってしまうと会社の経営に影響が出てしまうので、相続対策として一時的に利益を圧縮することが有効となります。
その方法としては損金性の高い生命保険に加入すること、含み損失を抱えた資産の売却や除却をすること、投資不動産を購入することなどが挙げられます。これらを組み合わせて利益を圧縮することで評価額を大幅に下げることも可能です。
非上場株式の場合は株式の評価額が下がっても、特定の企業に買われてしまう心配がないので買収などを恐れる必要がありません。一時的であれば利益を圧縮するデメリットは低いといえるでしょう。また、航空機リースなども利益を圧縮する手段の1つです。
さらに、合併や会社分割などを行って組織再編をすることや持ち株会社方式を活用することによっても利益を圧縮することが出来ます。企業によってどの選択肢をとるのが有効かが変わります。そのため、専門家に相談することが大切です。


株価が下がったらすぐに事業承継を進める


利益の圧縮などを行って株価が下がったら、後継者に株式贈与や売却を行います。この時贈与税を支払って贈与するのか、相続時精算課税制度を利用して贈与するのかによっても負担額が変わることになります。それ以外にも子供が設立した会社に銀行から融資を受けて買い取るという方法もあります。
株価はすぐに変動するので株価が下がったときにはすぐに事業承継を進めることが大切です。また、株価に対する予測も欠かせません。非上場株式の場合、株価の値動きはある程度予測することが出来ます。株価が低いうちに事業承継をすることが出来れば、相続による費用負担は少なくなります。


専門家に相談する


事業承継や相続対策はそれぞれの企業に合った内容で行う必要があります。どの方法を取れば最も負担が抑えられるのかについて判断が難しいケースが少なくありません。そこで、専門家に相談することが有効です。なお、どこに相談するかをじっくり決めることも重要といえるでしょう。
事業承継の相談先の1つとして銀行があります。融資を含めた対策をしたいときには銀行に相談すると円滑に進められます。特に取引銀行ならば、すでに決算内容などを含めた会社のことを理解していてその点もメリットとなります。ただし、実際に相談相手となる人物は外注であるケースも多いです。
また、節税対策を積極的に行ってほしい場合は税理士に相談するのが有効となります。加えて、自社株の市展示の税金についてもアドバイスをもらうことが出来ます。ただし、事業承継に詳しい税理士の方とそうでない税理士の方がいるのでその見極めが大切です。さらに、法律的なトラブルを起こしたくない場合や係争対策をしたい場合は弁護士や司法書士に相談する必要がありますが、税金の専門家ではないことに気をつけておきましょう。
その他にも、証券会社やコンサル会社に相談することが選択肢に含まれます。事業承継における相続対策は複雑な部分もあるので、相談先を慎重に決める必要があるといえるでしょう。1人だけでなく、様々な方に相談することも重要となります。


無料の診断サービスを利用する


税理士や弁護士など専門家に相談すると費用が掛かります。そこで便利なのが無料の診断サービスです。事業承継の相続対策で悩んでいる経営者は少なくないため、税理士や弁護士のホームページでは無料の診断サービスを用意していることもあります。そのサービスを利用することによって、どれくらい節税できるのかをある程度把握することが出来ます。
節税額を把握すれば、税理士や弁護士に相談した際の費用対効果も推測できるので、どこに相談するのが最も有効かも予測することが可能です。したがって、相続対策の第一段階として無料診断サービスを利用するのは有効な手段といえるでしょう。


時間をかけてベストなタイミングを狙う


事業承継の相続対策ではタイミングが非常に重要です。株式の評価額によっては贈与税や相続税が大きく変わることも珍しくありません。事業承継の計画を立ててすぐに承継するのではなく、最適なタイミングで進めていくことが大切です。なお、最適なタイミングで行うためには時間をかけて事業承継を実施することが欠かせません。向こう数年のうちに事業を承継することが決まっているという状況であれば、徐々に準備を進めていきましょう。
また、事業承継の相続対策の際には現経営者と後継者の意思を統一しておく必要があります。例えば、現経営者の努力により事業承継税制の特例を適用させたとしても、後継者がその要件からはみ出る経営をしてしまうとすぐに税金を支払わなければならないようになります。現経営者と後継者が同じ方向を向いていなければ、相続対策を有効に進めることはできません。それゆえに、相続対策の相談などを税理士や弁護士にするときは、現経営者と後継者の両者が出席する必要があります。
 

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